ナレーションが前に出てこないのは、なぜ?
多くのコミュニティFM局で、営業の際に言われる決まり文句として多いのが、
”FMの音質に関しては県域FM局にお任せして、コミュニティFMでは、音質の向上は必要ありません。"
というお言葉。正直言って、そんなコミュニティFM局は「早く潰れてしまえ!」と思います。
当たり前ですが、放送に携わる以上、音質の向上を諦めているなんて発言は、職務放棄に等しいとさえ、感じます。
ただ、何軒も話を聴いているうちに、分かってくるんです。
この人たちは、音の事を何もわかっていない。いや、理解できるスタッフを雇い入れる余裕もないから、まともな提案に対しても、ただただ鎖国状態を続けているだけなんです。
初期投資として、放送用の機材は購入できたけど、ランニングコストは、購入後もかかります。
CDプレーヤーなどは、使用頻度も高く、県域クラスでも使用している機材を入れている為、同じランニングコストでは、放送を継続するだけで精一杯なのかもしれません。
しかしこの文章のテーマ「ナレーションが前に出てこないのは、なぜ?」と、全く関係ない話で、スタートしたかに思えますが、これが関係大アリなんです。
原因を見誤っている
ナレーションが前に出ないって事は、簡単に言ってしまうと、何を話しているのかが、聞き取りにくいって言うことになります。これはハッキリ言って、放送事業においては、最優先の問題が、クリアされないまま放送事業として、成立させているということになります。
ただ、この悩みを抱えている放送局は実際少なくなく、良くしたいと策を試みたが、現状から大きな改善は見られなかったというのが、殆どでしょう。
ではなぜ、色々な策を講じても、改善が見られないのか?
答えは簡単です。殆どのコミュニティFM局が講じたポピュラーな手段が次のとおり
- マイクロフォンを、感度の高いコンデンサータイプに変えた。
- コンプレッサーなど、音圧を上げる為のエフェクターを追加した。
分からなくはないです。全否定する気もありません。ただ現在抱えている問題を解決するのに、購入する必要性は"ゼロ"です。正直こうした小物を根拠も無く購入する事こそ、コミュニティFMの経営を切迫させる無駄な投資だと思います。
音響機器を売る立場としては言いづらい立場ですが、正直FM程度の音質をクリアするのに、たとえば、10万円のマイクロフォンと、1万円のマイクロフォンを比べても、大差はありません。気づくリスナーは、皆無でしょう。ではコンプレッサーなどのエフェクターはというと、もっと必要ありません。
原因はココなんです
冒頭でお話した、何も分かっていない方でも、デモを行うと驚かれるんです。
"声がずいぶんクリアに前に出ていますね。それなりのスタジオで、録音されているからですか?"
"いいえ、あるコミュニティFM局の生放送の同録データです。"
"マイクロフォンは「ダイナミック」、エフェクターは「リミッター」程度です。"
"ええ~"
ショックですよね。知らなかったとは言え、生放送の同録データですから、録音番組のように特別に調整していることも無く、まるで県域FM局のように腰もあり輪郭もハッキリとしたナレーションが、淡々と聞こえてくるのを目の当たりにして、今までの「門前払いモード」が急変して、突然「VIP待遇」です。
ほとんどの方が、音が良くなるという事が、FM独特の広がりのある「音楽」が放送できるだけだと勘違いしているのです。自分たちの抱えている「ナレーションが前に出てこない」という問題が、収録する環境や、その周辺に潜んでいると考えている限り、最終的なプロセッサーが"鍵"だったと気づくことは難しいでしょう。
そもそもプロセッサーは、非常に高額で、設定にも非常に高度な知識が必要な為、とりあえず程度のリミッターが、一生懸命にクリップさせない為だけにラックに刺さっているのを見ると、正直悲しくなります。もちろん数百万円のハードウェアのプロセッサーしか無いなら分かりますが、10分の1程度の予算で、同等の音質を得ることのできる現在においては、なおさらです。
もし、この内容に心当たりがあるコミュニティFM局がございましたら、お気軽にご相談ください。